「私とは何か」について悩まない菜の花畑の菜の花ひかる
鬼ごっこするため鬼を決めているじゃんけんぽんもひとつの呪文
「死は眠り」「死は溶けること」なぐさめは言葉ではなく空の青色
ミニバラの鉢植えを買うごめんねの代わりに、ありがとうの代わりに
流れ星流れたあとの空にある白い人さしゆびの残像
ブランコがうまくこげない妹の影、姉の影、杉の木の影
Amazing Grace 流れて良いようなオレンジ色の空遠くまで
君んちがあった今では草むらの草を揺らしてバッタが跳んだ
最新のSmartphoneでさほどには待たれていない「帰るコール」を
「おかえり」が「ただいま」よりも多いとき不幸な顔をしてはいけない
謝っている人を責めている人を映すテレビを見ている人を
八百長が文化だったりする国に生きて眉間に皺が三本
町工場だった空き地に暗闇が満ちると時は止まってしまう
鉛筆で地平線描き翼あるものをスケッチブックに綴じる
反政府デモで死ぬ人災害で死ぬ人線路の上で死ぬ人
はなたれた紙飛行機の飛ぶかぎりパパの周りでさえ空である
「生きるとは戦いなんだ」と敗北者たちが言うならまだいいのだが
みんなすることを僕らもするだけの土曜の夜と日曜の朝
十五年、その短さを知らぬゆえ振り返ろうとする十五歳
一人死ぬことがニュースになるようなやさしい国で息をしている
日本語で愛うちあけてしまう日のぼたん雪、夜、夜、ぼたん雪
梅の木の梅のつぼみの赤らんでいく三次元世界の二月
まだ恋を知らない少女が弾くようなピアノぽろぽろぽろぽろぽろろ
バカらしいことをバカだと言う自由常に持ちつつ雨の月曜
君がいたような気がしてふりかえる空は青いっきりで無意味だ
窓越しの一月二日の青空をWiiリモコン振りつつあおぐ
幸福が花咲くようなものであるならば母にもあった幸福
子が二人寝て妻が寝て僕一人起きていて今年もあと三日
鼻歌で木村カエラを口ずさみ悪いことさえなければ良い日
「悪い子にサンタは来ない」という嘘がはびこる12月の屋根の下
angelとangerが似ていることを今日の最後の発見として
そばにいる時そばにいる君を抱くこの手はひとりのさみしさも抱く
海老蔵は海老蔵、僕は僕、君は君で良かった。こないだまでは。
夜九時の牛丼屋にてため息を誰かがふっとつく、僕もつく
行く先も形も全部吹く風に委ねてもなお雲は自由だ
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