結果的に締め切りに間に合いませんでしたが、100題まで詠み終えたのでまとめてこのブログにアップします。
031:てっぺん
てっぺんの枝に白雲からませて公園杉は夏へ駆け出す
032:世界
母猫は右折レーンに死す我は世界で一番不幸ではない
033:冠
悔しさも栄冠である 思い切り石ころ蹴っとばしたとしても
034:序
古本の方法序説めくりつつ我は恋するゆえに悲しい
035:ロンドン
暮れなずむ兜町からロンドンへ投資家たちの地球は廻る
036:意図
復讐の意図かも知れぬ粉々になるまで立ったままのヒマワリ
037:藤
六月の花嫁たちに祝福を藤原紀香のことは忘れて
038:→
ここじゃない何処かへ行こう非常口誘導灯の→の碧
039:広
広がっていく茜色 思春期のスケッチブックに滲めば独り
040:すみれ
愛玩も愛のひとつかすみれ摘む少女はヨークシャテリアを抱いて
041:越
海越えて飛んで行けないカモメらに水平線は断絶の意味
042:クリック
17インチの窓に夜白む亡き人のサン・トワ・マミーをクリックすれば
043:係
みんないつか死ぬから僕はそばにいて死ぬまで君を笑わす係
044:わさび
古き良きのび太の夢は叶えない水田わさびの出すタケコプター
045:幕
あっけない幕切れだったら幸せで不倫の愛も北朝鮮も
046:常識
片目だけつむり片耳だけ閉じて我も常識人のフリする
047:警
くろがねのアサルトライフル抱きしめて国境警備兵の青空
048:逢
今日逢えて明日逢えない明後日も逢えない君のことが好きです
049:ソムリエ
ママでなく彼女が彼女であるための野菜ソムリエという肩書き
050:災
災害を伝えるニューステロップの速さで過去に変わる現在
051:言い訳
また僕は僕の心に言い訳し今夜も旅の支度をしない
052:縄
人でないもの人の死を悼まざれども沖縄に咲く曼珠沙華
053:妊娠
そんな顔して妊娠を告げるからこんな顔して僕は聞いてる
054:首
長い首ゆえにキリンでブチゆえにパンダで僕はなにゆえ僕か
055:式
(子への愛)(他人への愛)(自分への愛)を較べている不等式
056:アドレス
子のメールアドレス知らぬこともまた孤独のひとつに数えん母は
057:縁
セルロイド縁のめがねに反射して君の瞳にかさなる他人
058:魔法
「かわいいね」「好きだよ」「いつもありがとう」君に唱える魔法の呪文
059:済
二元論的救済を信じてる常に被害者たらん僕たち
060:引退
平成も来年22年まだ引退しない工藤公康
061:ピンク
一面を薄いピンクに塗ることを春と呼びたき君の画用紙
062:坂
労働の意味とはなにか 駆け上がるには長すぎる坂道にいて
063:ゆらり
想像でのみ美しき過去ゆらりアップルパイの湯気の幻
064:宮
魂のある人形を押し抱き初宮参りの玉砂利の音
065:選挙
選挙後も貼られたままのポスターの作り笑顔に冬の雨降る
066:角
アクリルの三角定規に透け空は数学教師の左90度
067:フルート
フルートの音色のごとき君の愛 古びた毛布のごとき我が愛
068:秋刀魚
一尾ごと数十円の死を並べ秋刀魚売られている夕まぐれ
069:隅
ユダでありダイバダッタであるときの我の心の隅の正論
070:CD
恋のみが叶えうるもの信じたし夜通しエンドレスのCD
071:痩
十五年足らずの過去をすべてとし毛布に痩せた老犬眠る
072:瀬戸
瀬戸物の茶碗をくるむ新聞にくしゃくしゃになるこの国の過去
073:マスク
マスクしていても微笑みうる君の瞳に幸せな誤解する
074:肩
肩車して一本の影となり 僕はおまえのために死にたい
075:おまけ
東京のヒエラルキーの中にいて誰かのおまけで生きてる誰か
076:住
同じだと証明をせよこの月と君の住んでるところの月と
077:屑
「いじめゼロ」達成校の教室の屑籠のずたずたの上履き
078:アンコール
偶像は立つことに倦みアンコールワットの仏もレーニン像も
079:恥
恥ずかしいキスに始まる青春の蹉跌はひとつも間違ってない
080:午後
不具者らを淘汰してゆきこの国に同じ形の影うつる午後
081:早
愛よりも遙かに蒼い空 最早死にたいほどは君を愛さず
082:源
野比のび太への同情を愛として源静香の幸せは何?
083:憂鬱
味噌汁の具がジャガイモであることも原因である朝の憂鬱
084:河
礫蹴る河原に我は影伸ばし 義務あるゆえにあしたも生きる
085:クリスマス
昨日より少し寂しき今日のためクリスマスイルミネーション光る
086:符
明日への片道切符をポケットに最終電車は月追いかける
087:気分
気分的問題ではあるけれど今ミスチルじゃなく吉田拓郎
088:編
さっき観た冒険映画の続編に失望しつつ君とキスする
089:テスト
安直なカテゴライズを望んでる心理テストを行う心理
090:長
長生きの秘訣ひとつも守ることなく三十八回目の冬
091:冬
灰色に冬空描きキャンバスに君の唇のみが暖色
092:夕焼け
後悔は無意味ではある 夕焼けが過去を愛することを強いても
093:鼻
鼻すする音も季節を知る音のひとつ君らと暮らすこの家で
094:彼方
一人とか二人だとかということに飽いて彼方の空が明るむ
095:卓
幸せが卓上コンロの火の青い色をするとき煮える鶏肉
096:マイナス
100人の村で6人間引かれてチーム・マイナス6%
097:断
見たことがないだけだからあり得ないとは言いきれぬ空の断絶
098:電気
電気屋の液晶テレビが一斉に酒井法子に判決くだす
099:戻
すりおろしリンゴはリンゴに戻らないリンゴはすりおろしリンゴになるが
100:好
言えるなら言えるだけ言うほうがいい明日は君に言えない「好き」を
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