※過去1年間のツイッターに書いた短歌、約100首です。
iPhoneで親満ツモるおじさんを乗せて電車は走る金曜
父の子と証明されている君のえりあしにあるつむじの形
性愛をのみ愛として11月のクリスマスイルミネーション
不動産屋さんの前の相武紗季相武紗季相武紗季相武紗季
幸せって何でしょうね、と君が聞き、何だろうね、と僕がこたえる
ガラス窓にひとりの夢を映すもうカムパネルラはいない星空
喘息の寝息聞きつつ銀色に曇るガラスに浮かぶともしび
君になることができずに僕として生まれた僕が君を愛する
子のいない男の口に幸せは語られハイボールに透ける夜
(アスペルガーなのよ、あの子)と噂している善人の形した影
路地裏のサイズで赤くなる空にさえずる親の雀、子雀
帰る家のある幸せのゆく道のすずかけの木に花は咲かない
十年の夏ゆき秋もゆき僕と君らの窓に冬の朝来る
携帯で君の心を聞く夕べ夕べに溶けていく僕の影
空よりも大きなものがないゆえに空に問うべき他人への愛
ある秋のある朝の雨うつ窓の遠くに母は病みながら住む
偽善者を偽善者と呼ぶ声持たず夕日は僕の影のばすのみ
新しいビルが建ちます。背の高い田村くんちのあった空き地に
君の夢ききつつ満ちてゆく月の欠けゆく月の夜をすごそう
歳時記にない言葉にて秋空のわざとのような青さを疎む
「遅くなります」とメール打つ銀色の通勤電車に誰かが轢かれ
カップ麺に湯をそそぐのも僕がまだ生きていこうとしている証
ひと休みして雲を見るもし生まれ変わるなら人間でもいいか
自己嫌悪している自己をすり抜けて涼しい風が惑星に吹く
おじさんが舌打ちをした円高と小沢出馬とあつすぎる夏
蟻飼育キットで蟻の巣を掘っている蟻だったりするのかも、僕
夢を追え、現実を見ろ、人生を語る大人を信用するな
口げんかはじめて勝ってしまいつつ愛が壊れていこうとしつつ
ブランコのすわるところが濡れていて今日の夕焼け空は揺れない
本当の愛に気づいた君がもう半分女じゃなくなってから
死んだ父死んだ叔母さん死んだ犬僕が愛するものは死者のみ
「ふるさとを棄ててはじめて得るもの」をたんぽぽ語にて話すたんぽぽ
たんぽぽと同じ風受く別離とはひとつの空に溶けあうことだ
戦いしもののみが得る敗北を夏の夕べの電車が揺らす
大人らの欺瞞見抜けばわずかずつ君の体に似合うワイシャツ
僕たちは別れの理由ひとつずつ持って明日の約束をする
iPodぐるぐる指でなで回しブルーハーツが聴きたい、今朝は
放課後の校舎が今日も少年の飛び降り未遂の空につつまれ
ハルマゲドンなど待たずとも僕たちはたった一つの失恋で死ぬ
左翼詩集閉じこめてある本棚に君が並べているドラえもん
110度パラボラアンテナと僕と弓張月と夏のベランダ
戦いを終えてウルトラセブン去りいつもオレンジ色の東京
金賢姫の出てないチャンネルを探す2010年アナログテレビ
吐き出せば牛乳パック三つほどだった胸一杯のかなしみ
岡井隆の歌を読み、思うこと無いから君を抱き寄せている (訂正)
交尾して死ぬる蝶らのわれよりも矛盾をもたぬ愛を見てをり
(死にたい)という友人に(死ぬなよ)と応えるきりの友情である
左手は右手と触れん六畳に並んで眠る我ら家族の
夏蝶を目で追うひとりひとりずつ誰の不在をかなしむ愛か
心にて君を殺して事足りてしまう小さな憎しみを持つ
処方箋一枚夏の空に透きわたしは病める児の父である
空の青色あまりにも濃くあの人もあの人もあの人も嘘つき
鉢植えの紫陽花買って一年の未来夢見し母と夢見ん
「生きているだけで幸せ」「生きているだけで不幸」というその嘘め
利己主義の愛うちあける我がために世界は少し時間を止める
シベリアのことを我には語らざり叔父の遠忌の日の曇空
労働に確かな意味を負う夕べ夕べの空に残る明るさ
母病んで父子向き合えるテーブルに林檎一つを暖色とする
ベビーカーの子眠り母もまどろんで各駅停車は春日を走る
病ある額にかかる前髪を撫でて我らは親子なりけり
警棒で黒人少年打たるるをYouTubeで見ている十三歳
さみどりの野に我と手をつなぐ子も我を愛さぬ自由を持たん
缶ビール一缶飲めば忘れうる二十四時間分の屈辱
春雨にブランコ濡れて少年の呼ぶ友の名も思い出になる
母の病むことを伝えるために鳴る着メロ少女の恋物語
サヨナラとハジメマシテと青空と咲けば散るしかない桜花
青年の夢はるかなり一生に一度世界をはげしく憎め
僕一人とけ込むための闇持たぬ住宅街をふるさととする
弱虫であってはならぬ君の父 #senryu #jsenryu
四つある枕に四つ夢並べ四人家族の窓に冬過ぐ
好きでない嫌いでもない人が死ぬ #haiku #jhaiku (再出)
僕の手に抱きうるものの小ささを知って小さな姿する愛
最愛のピエロ産まれし日を赤く塗って手帳は父たる証
憎しみをいつまで捨てず濃き影を真昼の街にうつさん我か
時に病むことも自然の摂理とし真昼の雨を見ている枕
短めのメールにこめている愛や一瞬都会に降る粉雪や
日本語のある制約に統べられている「愛」「自由」「夢」「君」「未来」
指切りをせがむ子の目にうるみつつ嘘つき男ひとりが映る
報復も娯楽のひとつテロップは殺人犯の死刑を告げる
アルバムに綴じる一枚 君がいる二月二日の東京の雪
二万キロ先で途切れる海を見るたったひとりの僕の限界
現状を変える力を持たぬ時、僕は自由を愛す。君より
ケイタイの麻雀ゲームで四暗刻単騎テンパイして朝の街
アクリルの三角定規に空透かし夢への最短距離を求めよ
教室のジョバンニたちの左目に飛ばない銀河鉄道走る
コカコーラではなくファンタグレープが飲みたい。ファンタグレープを買う。
虚栄心かなえることを愛情と呼んで君らは結婚をする
ある悲報のためにも僕のポケットで携帯電話は光るのだろう
オリオン座からシリウスをさがす指 真冬の夜をただよう君の
僕たちと僕たちじゃないもの分かつ結露ガラスの向こうの真冬
明日戦死することはない僕の今日君を愛する二十四時間
労働の疲れをこころよきものとして丸くなる小さな背中
天国へ君らは行けば良い我はポルノの国の純愛に死す
「何故?」という問いに答えるふりをして二十四時間ごとに来る朝
板書されし事実のために教師らの白くまみれるだけの指先
今日もまた昨日と同じ一日であれと祷っている母の朝
少年の勉強机に刻まれて一行の詩に問われてる愛
やわらかく膝に抱く子を眠らしめ我の一日すべてを赦す
「森にいるみたいな女の子」ってのはオランウータンのメスのことかな
我が秋は一枚風に舞う紅葉 屋上緑化のビルの底にて
十五歳世界を変えてみたくなり飛行機雲の白さを愛す
誰よりも君が好きだという嘘をついてしまえるほど君が好き
想像でのみ美しき過去ゆらりアップルパイの湯気の幻
「いじめゼロ」達成校の教室の屑籠のずたずたの上履き
一尾ごと数十円の死をならべ秋刀魚売られている夕まぐれ
明日のため暮れゆく今日に影のばし良き人たちの影と交わる
のど飴のかすかな苦味脳内に満たし誰をも愛さない冬
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